夢メモ
彼氏と飲食店に入る所から覚えている。
旅先だろうか?見たことのない店だった。
扱っているのは和食っぽくて、店が広い割に従業員も少ない。チェーン店ではなさそうだ。しかしそこそこ繁盛している。
年季の入ったこげ茶の木製の机がずらりと並び、照明が暗めの落ち着いた店内だ。
ルールが分からなくて、忙しそうな店員さんを捕まえて訊ねた。
「ウチは先に注文していただいて、料理が出来ましたら席を決めていただく方式です」
との事なので料理を注文した。
メニューは皆定食だった。
彼氏の注文した料理は案外早く出て来たのでとりあえず席について待っていた。が、待てども待てども私の注文した物が来ない。
店員さんに訊ねると、
「もしかしたらあちらの机にあるかも。あちらの机は、完成したけどお客様が取りに来られない料理を並べてあります。」
あちら、に向かうがそれらしき机が無い。
歩き続けて店の端まで来ると、そこは番号の振られた1人用の椅子とテーブルが所狭しと並べられたテラス席だった。
客はまばらだが、皆位の高そうなおじさんおばさん達で、高級席なのかなと思った。
私の番号は53番だった気がした。
53番の机に行くと私の注文した料理があった。
さて料理を持って彼氏の居る机に戻ろうとしたが、店内があまりに広く、しかも方向音痴なのに焦ってズンズン進んで来てしまった為、どこだかわからなくなってしまった。
しかもこの高級席らしき場所から勝手に料理を持ち出してウロウロするのも恥ずかしい。
スマホで彼氏に連絡しようとしたが、スマホは置いて来てしまっていた。
仕方なくそこで食べた。
彼氏も仕方なく1人で食べたらしく、後で店の入り口で合流出来た時しこたま怒られた。
なんで戻って来ないのか、なんで連絡しないのかと。
そこで場面が変わる。
まだ旅先のようで、見慣れぬ雑貨屋さんに居た。
そこはアングラ手作り雑貨を取り扱うお店らしい。お札や変な人形、刀や呪術に使いそうな道具などが置いてあり、店内は賑わって居たが、これまた薄暗かった。
お店自体も使われなくなった古民家を改装したもののようだ。ボロボロの木製の戸棚などは雰囲気を残す為かそのまま使われている。
部屋中に和風ホラーな装飾か施してある。
例えば壁に穴を開け、その奥の暗がりに日本人形を祀って簡易神棚にするとか。
床に血の跡のような模様を付けるとか。
天井の隅から長い髪の毛が垂れ下がっていたりとか。
壁に小さな戸が取り付けられており、興味を持って開けると、窪みに気味の悪い封筒と動物の毛が置いてあり、戸の裏には「←動物の怨霊」と書いてあったりとか。
訳がわからないがとにかく不気味な仕掛けが沢山あった。
子連れの親子が居たが、子供が怖がって泣き出すんじゃなかろうかと思った。
ホラーが好きな私はゾクゾクしながら店内を楽しんだ。
店を出ると隣接した建物の中にクレーンゲームなどが並んで居た。
ゲームセンターというほどでなく、建物の通路に突如5、6の機械が並んで居るだけだ。
背中掻き棒のようなアームを操作して棚からお好みの商品を引きずり落とすゲーム機があった。
景品がお菓子だったのでやってみたがイマイチ取れない。
隣で同じゲームをプレイしているおじさんが滅茶苦茶景品を落としているのを見て、やり方を教えてくれないかと話しかけた。
おじさんは親切に教えてくれた。
おじさんの言った通りにやると沢山のお菓子が落ちた。しばらくおじさんと並んでお菓子を落としまくっていると、辺りに人気がない事に気が付いた。また、店の中が真っ暗だ。
今まで気付かなかったのは、ゲーム機がうるさいし明るかったからだ。
慌てて下の取り出し口に溜まった景品をかき集める。
ゲーム機から離れると真っ暗で、かろうじて建物の壁が見えるくらいだ。私は恐怖したがそれでも隣におじさんが居たので、心強かった。
おじさんが口を開いた。
「どうして電気を消されたんだろうね。もう、人が残って居ないと思われたのかな。そうなるとこの建物から出れるかどうか怪しい。ここは寂れているとはいえ病院だから、出入り口のセキュリティは厳しいと思う。」
えっ、と固まった。
そして見回すと、微かながら病院特有の看板などが見えた。
気付かないうちに病院に閉じ込められてしまったらしい。なんだか滅茶苦茶怖くなって来た。
この病院の構造は全くわからなかったが、今は4階に居るらしい。おじさんと一緒に当たりをつけて1階まで降りる事にした。
3階に降りると人の気配がした。
足音や、走る人影が見えた。窓に近づいて階下を除くと、月明かりの中走って病院から出て行く人影がちらほらと。
「やっぱり、取り残されたのは私達だけじゃなかったんだ。病院側もお客さんが残ってるの知ってて電気消したんだよ。まだあんなに人が!」
おじさんに報告した時、おじさんはこっちを見て居なかった。
おじさんが警戒する方に目をやると、遠くから人影が走ってくる。若い男性が息を切らして私達の横を駆け抜けた。その後を追って早歩きで現れたのは、でっぷりと太ったお腹を白衣で隠した眼鏡のおじさんだった。
装備品から医者だとわかるが、一つ似合わない物を持って居た。チェーンソーだ。
一瞬でこの人が病院の電気を消して逃げ遅れた客を殺して回ってる事が想像出来た。
私とおじさんは死にものぐるいで逃げ出した。
振り返らなくても医者が追ってくるのがわかる。
「最悪2階まで降りれば窓から外へ飛び降りて逃げられる。階段を探せ」
おじさんは短くそう言うと後は一言も発さなかった。
私はおじさんと別れて逃げたら運が良ければおじさんの方に行くかも…とか考えながらも、あまりの恐怖におじさんの後をぴったり付いて逃げる事しか出来なかった。
病院はダンジョンのように入り組んで居たが、やっとのことで階段を見つけ2階に降りた。誰かが同じことを考えたのか窓が開いて居たので、おじさんの後を追って飛び降りた。
病院の周りは林になっており見通しが悪く、とりあえず公道を目指して走り出した。
と、おじさんが立ち止まる。
少し先にあの医者が居た。先回りされた。
きっとゲームに夢中になって居たせいで、病院内の最後の客が私達だったんだ…。
だからこんなに執拗に狙われるんだ…。
絶望したが、医者はどんどん迫ってくる。
私達と医者の間にひときわ大きな木があったので、その木を盾にしてなんとかやり過ごそうとタイミングを待った。
医者が木の右側から回り込んで来たので私達は左側から走り抜けた。
医者は予想して居たらしく、急に方向転換してチェーンソーを振るった。
おじさんが胸を切られた。
私はその姿を見ながら横を駆け抜けた。
そこで目が覚めた。
おじさんの白いシャツに血が滲んで行く姿が目に焼き付いて居た。
最悪な目覚めだった。